2011年3月11日に起きた地震、津波、そして原発事故。
7年間ずっと、安心・安全に暮らすということは一体どういうことなんだろう?と多くの人が問い直す機会だったのではないでしょうか。
高円寺のカフェ「ぽれやぁれ」には、震災をきっかけに人が集まる機会が増え、さまざまな試みが行われましたが、底に流れるのは、私たちの暮らしを根本から捉え直し、これから先はどうしていこうという思いであったように思います。
そんな中から、昨年5月、突然「ワタ」の栽培が始まりました。縁あって分けていただいた貴重な日本在来種の和棉(ワワタ・ワメン、いわゆる木綿、オーガニックコットン)の種を畑で育てたのです。
埼玉県所沢市でヤギと羊を育てながら、無農薬、無化学肥料でお茶や穀物、野菜を栽培し、自給自足生活を実践しているオギノエンファームにお世話になり、農作業のイロハをはじめ、訪れるたびに様々なことを教えていただきました。強力なサポートのお陰で、9月から12月にかけて、初心者集団にしては上出来なほどたくさんのワタの実を収穫。
さて、たくさんの白いふわふわしたワタの実を前にして、改めて私たちは原点にかえって考えました。
そもそも製品化することや衣類の自給自足生活を目指して始めたわけではないのです。人間にとって「生きていくのに必要なもの」は、本来、身近な自然からいただくもので手づくりするのものだったはずです。ところが現代では、お金を稼ぎ、お金を払い、既製品を手に入れ、壊れたら廃棄し、新しいものを買うことに慣れ、気づけば必要のないものまで買ってしまい、モノがあふれてしまうほどです。
さまざまな問題は、こうした人類が培ってきた「あたり前」を見落としていることから起こっているのではないでしょうか。しかも身近な木綿製品の原料となるワタの栽培は、想像を超えて、大変なことよりも楽しい、心地よい、嬉しいことの連続でした。
「イトテト舍」という活動名は収穫も終盤に差しかかった頃、約半年間の経験やそれまでに心の中に温めてきたそれぞれの人の思いをたくさんの言葉に置き換えて、そこから生まれた新しい言葉です。
イトテト舍は、ワタの栽培以外にもオギノエンファームのお手伝いをしたり、何かに情熱をもって取り組んでいる方のお話を伺ったり、みんなが一番気がかりな原発問題について学んだり、映画を観たりして、おいしいものをいただきながら率直に話し合うこともあります。収穫したワタの加工も少しずつ始まりました。
種をお分けしますので、ワタを育ててみませんか?
また、イトテト舍の活動にもぜひご参加ください。